OUR STORY

Quality

可愛さと上質さが優位のハイセンスなものづくりを徹底

長持ちがウリの靴下を作ろうと思ったことは一度もない。マルコモンドではそれよりも、肌触りの良さや気持ちよさ、柔らかさこだわっている。むしろ、柄の可愛らしさや靴との相性――履いたときの肉感やたわみが作り出すファッション的な風合い、靴を脱いであらわになった時の佇まいーーそういうことが気になって仕方がない、といった人たちによって、身に着ける人やスタイルを限定しないものづくりが行われている。

2007年に創立。美大を卒業して広告制作会社で働いていた当時、大規模なプロジェクトに関わっていた角末有沙の心に「もっと日常的なものを作りたい」という思いが首をもたげた。旅に行く時のように感覚を研ぎ澄ませながら、創り手として、使い手として生活を楽しむには? そんな問いから靴下という答えを導き出した。品質重視の丁寧な国内生産や、細部にもこだわったファッション性を重要なエレメントとしながら作り続けていくうち、こだわりの強い一定層からの支持を獲得するようになった。

ファッションブランドがテーマを打ち立ててコレクションを発表するように、発足当時から毎シーズン世界中のどこかの都市を発想源にしたソックスブランドを始めた。マルコ・ポーロと世界を合わせた造語による“MARCOMONDE=世界を旅する旅人”と銘打ち、風土や生活様式の違う異文化へのときめきとリスペクトをコレクションに詰め込むために、学びながらリサーチという名の旅をする。テーマとなる地に実際に訪れては五感をフル稼働させて、観光地にない隠れたシンボルに目を光らせる。建築やテキスタイル、タイルなどのディテールに刻み込まれている歴史や風土、日常に溶け込んだ文化。手のひらで受け取る情報量が全く変わった現代でも、実際に訪れて実体験に落とし込み、それらのインスピレーションをもとに産声をあげたデザインが日本の地で新たな日常を作リ出していく。

あえてすることはしない。
日常の延長線上にあるものづくり

ものづくりのプロセスは編集作業に近い。何かを目指してデザインするのではなく、決まった枠の中で何ができるのか。同時に、技術的にできるけど何故かやっていないといったような慣習に基づく固定概念を崩していく。工場との信頼関係が出来上がった今、任せる部分と譲らない部分の分別はついているから、確信犯的に織り込み済みのオーダーによって型を壊しながら作り出していくのが面白さでもある。

10周年を機に誕生したNEW CLASSICは、カラーを多めに展開する無地のシリーズ。自分が履きたいという思いと、コンバースやTABIシューズなど自分の定番に合わせるためにこだわり尽くしたシリーズだ。サラシのような白と生成りの白といった絶妙なカラーの差を、コンバースのオールスターのカラーで履き分ける、そういった見えないところにこだわる欲求を、マルコモンドは満たしたい。ローファーから出るリブの厚み、バレエシューズに合わせる透け感。自分の中にある絶対的な法則に向き合い、妥協せず作り出されたものばかりだ。

ONMMはON MARCOMONDEの略称。プリントを施した定番のリブソックスのラインで、トレンドやメッセージ性が比較的強い。在庫にあらためてプリントすることで、新鮮なミクスチャーとなり、アップサイクル的なエレメントも持ち合わせている。過去のテーマにまた違ったベクトルの視点を重ね合わせる行為によって新たな発見にもつながる、実験的な存在でもある。

見えないところにこだわる欲求を、
マルコモンドは満たしたい

バイト代をすべてMARTIN MARGIELAやCOMME des GARÇONSなどに注ぎ込んでいたハイティーン時代。自分にとっての日常の定番を突き詰めたときに存在したこだわりは、欲しいと思えるモノへの純粋な視点が軸になっている。TABIブーツの靴下が欲しい、と作り始めた2本指ソックスは、ブーツを脱いでソックス姿になったときに指が美しいバランスを描くように手作業を挟んでいる。タイツにおいては、股下が下がったときの居心地の悪さをなくすよう、股上を長く設計している。ガラクタのように積み上がったものの中や、小さな違和感や信念からデザインの原石を探し出し、純粋に欲しい、可愛いと思ったものを掬い上げて機能と表現の両面において理想的な形にして世の中に送り出す。ただそれだけのことだ。

機能性の高い靴下を目指しているわけではない。それよりも、穴が空くほど糸を見ては可愛さを見出し、編んだ後の風合いや、編んだ方がより可愛いとか、そういった議論を日々している。技術面は靴下オタクな工場のプロたちに任せている。縫い目1ミリ以下の世界で数え切れないほどの工程をつきっきりで仕上げる職人たちと作り上げたチームワークそのものが、ブランドのひとつの表現だから。



photography : Yoko Takahashi
edit & text : Yuka Sone Sato ( Little Lights )

×